「肩が痛くて寝返りができない」「洗濯物を干そうとしたら激痛が走った」――こうした悩みは、50代から60代を中心に増えている五十肩(四十肩)の典型的な症状です。江別市のふくい整骨院でも、中年以降の患者さんが「夜寝られない」「肩が上がらない」といった訴えで来院されます。
五十肩は、痛みの激しい「疼痛期」を経て、肩が動かなくなる「拘縮期」へ移行します。厄介なのは、疼痛期の痛みが引いた後、拘縮期で放置されるケースが多いこと。気づいた時には「肩の可動域が大きく制限されたまま」という状態に陥る患者さんが少なくありません。本記事では、五十肩の全段階と、それぞれの段階で必要な対処法を、実践的に解説します。
五十肩とは何か
医学的定義と発症メカニズム
五十肩(ごじゅうかた)は、医学的には「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」と呼ばれる疾患です。肩関節を構成する骨、軟骨、靭帯、腱、筋肉などの周囲の組織に炎症が生じ、痛みと可動域制限をもたらします。
肩関節の構造:肩関節は人体で最も可動域が大きい関節です。上腕骨(じょうわんこつ)の骨頭が肩甲骨のくぼみ(関節窩)にはまる形で、複数の筋肉(腱板)と靭帯で支えられています。この腱板は、棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)、肩甲下筋(けんこうかきん)、小円筋(しょうえんきん)の4つの筋肉から構成され、細い腱で上腕骨に付着しています。
炎症の原因:加齢に伴い、肩関節周囲の血流が低下し、組織が硬くなります。同時に、姿勢の悪化や運動不足によって肩周辺の筋肉が緊張すると、腱板や靭帯に微細な損傷が生じます。この損傷をきっかけに、炎症反応が始まるのです。

【画像①:肩関節の解剖図】 肩関節の構造、腱板の位置
年代別の発症率
五十肩は「五十」という名称がついていますが、実際には40代から60代を中心に発症します。
40代 – 発症率は約2~3%。比較的まれですが、肩を酷使する職業や、急激な運動の開始がきっかけで発症することがあります。
50代 – 発症率は約5~7%。最も多い年代。ホルモン変化や加齢に伴う組織の脆弱化が進む時期です。
60代以上 – 発症率は約3~4%に低下するものの、症状が重くなりやすく、回復期間が長くなる傾向があります。
中年以降の人が五十肩になりやすい理由
なぜ、40代、50代、60代に五十肩が増えるのでしょうか。複合的な要因があります。
加齢に伴う組織の変化
コラーゲンの質的低下 – 加齢とともに、肌に現れるしわやたるみと同じように、肩関節周囲の靭帯や腱に含まれるコラーゲンの質が低下します。弾力性が失われ、伸展性が減少するため、小さな負荷でも損傷しやすくなります。
血流の低下 – 中年以降は、肩周辺を含む末梢血管の血流が低下。組織への酸素供給が減り、修復能力が低下します。
筋肉量の減少 – 特に女性は更年期を境にエストロゲン低下に伴い、筋肉量が急激に減少。肩を支える筋力が弱まり、関節への負荷が増加します。
姿勢悪化と運動不足
デスクワークによる猫背 – 長年のデスクワークで首や肩が前に出た「猫背姿勢」が固定化。肩関節の位置がずれ、腱板への負荷が増します。
運動不足 – 中年以降、運動する機会が減ると、肩周辺の筋肉が硬くなり、関節の可動域が低下。わずかな動きでも痛みが生じやすくなります。
ホルモン変化 – 女性は更年期のエストロゲン低下に伴い、靭帯や腱の柔軟性が低下。男性も加齢に伴うテストステロン低下により、筋肉の柔軟性が減少します。
仕事のストレスと自律神経バランスの乱れ
交感神経優位の状態 – ストレス下では交感神経が優位になり、肩周辺の筋肉が常に緊張状態に。血流が悪化し、組織の修復が進みません。
慢性的な肩こり – 仕事のストレスや姿勢悪化による肩こりが数年続くと、肩関節周囲に微細な炎症が蓄積。五十肩の発症へと進行しやすくなります。
五十肩の3つの段階と特徴
五十肩は、発症から回復まで、典型的には3つの段階を経ます。各段階の理解が、適切な対処の鍵になります。

【画像②:五十肩の3段階フロー図】 疼痛期(0~3ヶ月)→拘縮期(3~9ヶ月)→回復期(9ヶ月~)の時間軸を横線で表示。各段階の特徴(痛み、可動域、日常生活への影響)を視覚化。
第1段階:疼痛期(とうつうき)~0~3ヶ月
特徴:肩関節周囲の炎症が急速に進行し、痛みが最も激しい時期。
症状:
夜間痛(やかんつう) – 特に夜間、寝返りを打つ時に突然激痛が走り、目を覚ましてしまう。患者さんの最大の悩みがこの夜間痛です。
安静時痛 – 肩を動かさなくても、ある角度では痛みが生じます。特に、肩を90度上げた位置(腕を横に上げた状態)で痛みが顕著。
動作時痛 – 腕を上げる、後ろに回すなど、ほぼすべての動作で痛みが伴います。
可動域の初期制限 – 痛みが強いため、自発的には肩を動かせないことが多いですが、この時点では関節の物理的な硬さはまだ軽度です。
持続期間:1~3ヶ月。ただし、症状の重さや対応の早さによって、6ヶ月以上続く場合もあります。
第2段階:拘縮期(こうしゅくき)~3~9ヶ月
特徴:疼痛期の激しい痛みが徐々に軽減されていく一方で、肩関節周囲の靭帯や組織が硬くなり、肩の可動域が著しく制限される時期。この段階こそが、放置されやすく、後々に大きな問題となる時期です。
症状:
痛みの軽減 – 疼痛期の激痛は引き、「ジンジンとした違和感」「重だるさ」程度に軽減。患者さんが「治った」と勘違いしやすい時期です。
可動域の著しい制限 – 肩の前方挙上(腕を前に上げる)、側方挙上(腕を横に上げる)、外旋(腕を外側に回す)が大きく制限。手が首の後ろに回らない、腰の後ろに手を回せない状態になります。
夜間痛の消失 – 疼痛期の夜間痛は消失し、寝られるようになります。これが患者さんを「治った」と錯覚させる大きな理由です。
日常生活への支障が最大 – 洗濯物を干せない、髪を洗えない、着替えが困難など、生活の質が大きく低下。この段階で初めて整骨院を訪れる患者さんも多いです。
持続期間:3~9ヶ月。放置された場合、1年以上続くこともあります。
重大なポイント:この拘縮期に適切な治療とリハビリを行わないと、可動域制限が固定化し、回復期に入っても可動域が十分に戻らなくなります。
第3段階:回復期(かいふくき)~9ヶ月~2年
特徴:痛みが大幅に軽減され、適切なリハビリにより、徐々に肩の動きが戻る時期。
症状:
痛みの大幅軽減 – 日常動作での痛みはほぼ消失。疼痛期や拘縮期のような苦しさはありません。
可動域の段階的回復 – ストレッチや運動療法により、少しずつ肩の可動域が広がります。ただし、拘縮期に治療を受けていない場合、ここでの回復は限定的です。
軽い違和感の残存 – 完全な回復までは、「肩が少し重い」「動かした時の引っ張り感」などの軽い違和感が残ることもあります。
持続期間:9ヶ月~2年。拘縮期での対応の質によって、回復期間が大きく左右されます。
疼痛期:夜間痛で寝られない時の対策
疼痛期の最大の悩みは「夜寝られない」ことです。この時期の対処法を解説します。
夜間痛が起こる理由
夜間痛が疼痛期に特に強くなる理由は、複数あります。
副交感神経の優位 – 夜間は副交感神経が優位になり、痛みに対する脳の閾値(痛みを感じる境界線)が低下。日中より痛みを強く感じやすくなります。
血流の停滞 – 寝ている間は体の動きが少なく、肩関節周囲の血流が停滞。炎症物質が局所に集まり、痛みが増幅されます。
姿勢による圧迫 – 寝返りを打つ時、患側の肩が圧迫され、激痛が走ります。
寝姿勢の工夫
横向き寝(患側を上にする) – 患側(痛い方)を上にして横向きに寝ます。こうすることで、患側の肩が圧迫されず、痛みが軽減されます。
クッションやタオルの活用 – 患側の肩の下と脇の下に、タオルを折ったものまたは小さめのクッションを置き、肩をサポート。肩が浮くような状態を作ることで、腱板への緊張が軽減されます。
腕のサポート – 患側の腕を、体の前でクッションに乗せて支えます。腕の重みが肩関節にかからないようにすることが重要。
仰向け寝での工夫 – 仰向けで寝る場合、患側の腕の下にクッションを置き、肩をやや上げた状態にします。これにより、腱板への負荷が軽減。
枕の高さ調整 – 首と肩を自然な状態で支える、高さの合った枕を選ぶことが重要。高すぎたり低すぎたりすると、肩への負荷が増します。
寝返り時の工夫
寝返りを打つ時、患側の肩に急激な負荷がかかり、激痛が走ることがあります。
ゆっくり動く – 寝返りは急激ではなく、ゆっくり時間をかけて打つ。患側に体重が乗らないよう、片方の手で体を支えながら動くとよいでしょう。
腕を体の側に置く – 寝返り時、患側の腕を胸の前に抱え込むようにして、体と一緒に回転させます。腕が患側の肩に負荷をかけないようにすることが重要。
応急処置:夜間痛が起きた時
夜中に激痛で目を覚ましてしまった場合の対処法です。
冷却 – 冷たい水で濡らしたタオルを患部に当て、5~10分冷却。炎症と痛みが軽減されることがあります。ただし、冷やしすぎて凍傷を防ぐため、直接肌に当てず、タオルを挟んでください。
痛み止めの服用 – 医師から処方された痛み止めを服用。疼痛期では、夜間痛で睡眠が妨げられることが大きな問題のため、痛み止めの活用は有効です。
体を動かさない – 激痛が走っても、無理に肩を動かそうとしないこと。静かに横向き寝の姿勢で、痛みが引くのを待ちます。

【画像③:夜間痛対応の寝姿勢ガイド】 NG姿勢(仰向け、患側を下にして横向き)とOK姿勢(患側を上にした横向き、クッション配置)を写真で比較。
拘縮期:肩が動かないまま放置される危機
拘縮期は、五十肩で最も見落とされやすい段階です。
なぜ放置されるのか
「痛みが引いた=治った」という錯覚 – 疼痛期の激しい痛みが消えると、患者さんは「五十肩は治った」と思い込みます。夜間痛も消えるため、医療機関への受診をやめてしまうのです。
可動域制限への気づきの遅れ – 拘縮期は、徐々に肩の動きが悪くなるため、急激な変化を感じません。気づいた時には「肩が大きく上がらない」という状態になっています。
整骨院や医師の指導不足 – 疼痛期の治療を受けた患者さんでも、医療者から「拘縮期の重要性」を十分に説明されないと、拘縮期に治療を中止してしまいます。
拘縮期に放置するリスク
可動域の固定化 – 拘縮期に適切な治療とリハビリを行わないと、肩関節周囲の靭帯や組織が硬い状態で「固まってしまい」ます。回復期に入ってからリハビリを始めても、可動域が十分に戻らないリスクが高まります。
日常生活の質の大幅低下 – 洗濯物干し、髪洗い、着替えなど、日常の基本的な動作ができなくなる状態が長期化。生活の満足度が著しく低下し、メンタルへの影響も大きいです。
職業活動への支障 – 肩を使う職業(建築業、看護師、介護士など)では、拘縮期に治療を受けなければ、仕事への復帰が大幅に遅れる可能性があります。
拘縮期の診断:可動域測定
整骨院や医療機関では、以下の動きで可動域を測定します。
前方挙上(ぜんほうきょじょう) – 腕を体の前に真っすぐ上げます。正常では180度(頭の上に上げられる)。拘縮期では、100~140度程度に制限されることが多いです。
側方挙上(そくほうきょじょう) – 腕を体の横に上げます。正常では180度。拘縮期では、80~120度程度に制限されます。
外旋(がいせん) – 肘を90度曲げた状態で、腕を外側に回します。正常では90度程度。拘縮期では、30~60度程度に制限されます。
内旋(ないせん) – 肘を90度曲げた状態で、腕を内側に回します。特に内旋が制限されると「手が腰の後ろに回らない」という日常生活への大きな支障が生じます。

【画像④:可動域測定図】 正常な肩の動き(前方挙上180度、側方挙上180度、外旋90度、内旋90度)と拘縮期の制限(前方挙上100~140度、側方挙上80~120度、外旋30~60度、内旋30度程度)を並べて比較。
日常生活での困難シーン
拘縮期に陥った患者さんが、最も困る日常動作を解説します。

【画像⑤:日常生活の困難シーン写真】
- 寝返りの困難さ(患側を下にできない状態)
- 洗濯物を干す動作(腰の高さまでしか腕が上がらない様子)
- 髪を洗う動作(頭上に腕が上げられない様子)
- 着替え(患側の腕を後ろに回せない状態)
- 仕事中の肩の使い方(デスク作業、肉体労働)
寝返り・寝る動作
拘縮期でも、疼痛期ほどの激痛は生じません。しかし、肩が動かないため、寝返りを打つという単純な動作が困難になります。特に患側を下にして寝ることはできず、反対側の寝姿勢に限定されてしまいます。
洗濯物を干す
腕を横や上に上げる動作が著しく制限されるため、洗濯物を干すことが大きな負担に。多くの患者さんが「腰の高さまでしか腕が上がらない」という悩みを抱えています。
髪を洗う
頭の後ろで手を組む、頭頂部に腕を上げるなどの動作ができず、髪を洗う際に外出先のシャンプーサービスに頼らざるを得なくなることもあります。
着替え
特に、患側の腕を後ろに回す(内旋の動き)ができないため、ボタンを留める、服の後ろにファスナーを上げるなどの動作が困難。患側から脱ぎ着するのに時間がかかります。
突発的な痛み
拘縮期でも、ある特定の動きをした時に「ピリッ」と突然痛みが走ることがあります。特に、患側に体重をかけるような動きをした時に起こりやすく、患者さんを不安にさせます。
仕事中の動作
デスクワークで肩を回す、肉体労働で腕を上げるなど、仕事の内容によっては大きな支障が出ます。特に、建築業や看護師などの肩を頻繁に使う職業では、拘縮期に仕事をするのが非常に困難です。
医師とのタイミング:注射治療との連携
五十肩の治療において、医師と整骨院の役割分担は重要です。
ステロイド注射について
何か:肩関節内にステロイド薬を注入し、炎症を抑える治療。疼痛期に最も効果的。
効果:痛みの軽減が迅速。多くの患者さんが1~2週間で疼痛が大幅に改善。
タイミング:疼痛期の患者さんで、痛みが強く生活に大きな支障が出ている場合に適応。整骨院での電気治療や手技療法と並行することで、より効果的です。
連携の形:疼痛期は医師に紹介し、ステロイド注射と医師の指導を受ける。同時に、整骨院での電気治療や超音波治療、ストレッチ指導を受けることが理想的。注射だけでなく、リハビリを並行することで、その後の拘縮期への移行を緩やかにできます。
医師と整骨院の役割分担
疼痛期:医師(痛み止めの処方、ステロイド注射)と整骨院(電気治療、超音波治療、軽い手技療法、ストレッチ指導)を並行。
拘縮期:医師の定期的なフォローアップと、整骨院での集中的なリハビリが重要。拘縮期こそが、整骨院の出番。
回復期:整骨院での段階的なリハビリを継続。必要に応じて医師の経過確認。
整骨院での効果的な治療法
江別市のふくい整骨院では、五十肩の各段階に応じた複合的な治療を行っています。

【画像⑥:整骨院施術シーン】
- 電気治療(低周波治療機器を患部に当てている様子)
- 超音波治療(超音波治療器を肩に当てている様子)
- ハイボルト治療(ハイボルト機器を使用している様子)
- 手技療法(スタッフが患者の肩にストレッチングを施している様子、またはマッサージ)
電気治療
低周波治療 – 痛みの信号を遮断し、痛みを軽減。疼痛期に特に有効。1日1~2回、15~20分程度。
効果:痛みの緩和に加え、筋肉の緊張も軽減。患者さんが動かしやすくなり、その後のリハビリへの取り組みが容易になります。
超音波治療
メカニズム:深部の組織に微細な振動を与え、血流改善と組織修復を促進。
効果:拘縮期での腱板の硬さを軽減し、柔軟性を回復させるのに極めて有効。週2~3回の施術で、数週間で可動域の改善を実感する患者さんが多いです。
特徴:表面的なマッサージでは届かない、深い組織(腱板)へのアプローチが可能。
ハイボルト治療
メカニズム:高電圧の電気刺激を用い、深部の筋肉や神経にアプローチ。痛みの改善と筋肉の活性化を同時に行えます。
効果:電気治療や超音波治療では改善が限定的だった患者さんでも、ハイボルト治療により、顕著な改善を見ることが多いです。特に拘縮期での可動域改善に威力を発揮。
特徴:痛みが強い患者さんでも、電気刺激を調整することで無理なく施術可能。
手技療法(マッサージ・ストレッチング)
疼痛期での手技:痛みが強い時期のため、患側の肩への直接的な強い刺激は避けます。代わりに、肩周辺の関連筋(僧帽筋、肩甲挙筋、大胸筋など)の緊張を緩和させるマッサージを行い、肩関節への負荷を軽減。
拘縮期での手技:硬くなった肩関節周囲の筋肉や靭帯に対し、段階的にストレッチングと圧をかけ、柔軟性を回復させます。特に、腱板が付着する上腕骨頭周辺への手技は、可動域改善に直結。
回復期での手技:肩周辺の筋肉全体のバランスを整え、正常な肩関節の動きへの回復を促進。
ストレッチ指導
整骨院での施術と同等に重要なのが、自宅でのストレッチです。段階別のストレッチを後述します。
自宅でのセルフケア・ストレッチ
五十肩の回復を加速させるには、自宅でのセルフケアが不可欠です。段階別のストレッチを解説します。
疼痛期のセルフケア
目標:痛みを増やさないこと。無理なストレッチは避けます。
振り子運動:患側の肩に力を入れず、上半身を前に倒し、患側の腕を力を抜いた状態で、ゆっくり前後に揺らす。20回程度。同じく左右、円を描くように動かす。無理なく、痛みが出ない範囲で実施。
温熱:入浴時に患側の肩を温め、血流改善。ぬるめのお湯(38~40℃)に15~20分。
姿勢への気づき:デスクワーク中は、特に患側の肩が上がりやすくなります。意識的に肩の力を抜き、リラックス状態を保つ。
拘縮期のセルフケア
目標:可動域の回復。段階的に、痛みが出ない範囲での動きを増やしていく。
タオルを使った肩甲骨ストレッチ:
患側の腕を体の後ろに回し、もう一方の腕がサポートしながら、患側を徐々に引き上げる。無理せず、20~30秒キープ。1日3回。このストレッチにより、内旋が改善され、「手が腰に回せる」という日常動作が可能になります。
壁を使った肩甲骨ストレッチ:
壁に向かい立ち、患側の腕を上に上げていく。壁に手をついて、少しずつ腕の位置を上げていく。痛みが出ない高さで、20~30秒キープ。1日3回。前方挙上の改善に有効。
肩甲骨寄せ運動:
背筋を立て、肩甲骨を背中の中央に寄せるイメージで、肩を後ろに引く。5秒キープ。10回×3セット。肩甲骨周辺の筋肉を活性化させ、肩関節の安定性を高めます。
温熱:毎日の入浴で患側の肩を温め、血流改善。ストレッチ前の温熱が特に効果的。

【画像⑦:自宅ストレッチガイド】 段階別ストレッチを連続写真で表示:
- 疼痛期:振り子運動(正面と側面の2アングル)
- 拘縮期:タオルを使ったストレッチ、壁を使ったストレッチ、肩甲骨寄せ運動(各3~4カットの連続写真)
- 回復期:より高度なストレッチ(後述)
回復期のセルフケア
目標:可動域の完全回復。本来の動きへの復帰。
ダイナミックストレッチ(動きながらのストレッチ):
腕を大きく回す、肩を回す、胸の前で腕を交差させるなど、動きながら肩を伸ばす運動。1日1回、5~10分程度。これにより、柔軟性と可動域がさらに向上。
強化運動:
肩周辺の筋肉を強化することで、長期的な再発予防につながります。軽いダンベル(1~2kg)を持ち、肩の横から頭上に上げる運動(サイドレイズ)を、10回×3セット。週3回程度。
日常動作への段階的復帰:
洗濯物干し、髪洗い、着替えなど、拘縮期に困難だった動作を、少しずつ日常に組み込んでいく。無理なく、痛みが出ない範囲で。
対側(反対側)の肩の予防
一度五十肩になった患者さんの多くが、将来的に反対側の肩も痛める傾向があります。予防策を解説します。
再発・対側発症のリスク
五十肩を経験した患者さんの約30~50%が、数年以内に反対側の肩を痛めるという報告があります。一度炎症が生じた組織は脆弱化しており、また、姿勢や生活習慣の問題が改善されていなければ、再発や対側発症のリスクは高いままです。
予防方法
毎日の肩周辺ストレッチ:五十肩が治った後も、週5日以上、毎日のストレッチを継続。肩甲骨の柔軟性を保つことが最大の予防策です。
肩周辺の筋トレ:軽いダンベルやレジスタンスバンドを使い、肩周辺の筋肉(僧帽筋、三角筋、回旋筋腱板)を週3~4回、継続的に強化。
姿勢の改善:デスクワーク中の猫背を改善し、肩が前に出ない姿勢を意識。定期的に肩を後ろに引き、ストレッチングを行う。
定期的な整骨院での予防ケア:月1~2回、整骨院で肩周辺の筋肉をほぐし、血流改善とバランス調整を行う。早期発見・早期治療につながります。

【画像⑧:予防トレーニング図解】 対側予防のための肩周辺強化運動を5~6パターン
- サイドレイズ(側方挙上)
- フロントレイズ(前方挙上)
- ラットプルダウン
- 肩甲骨寄せ運動
- 腕立て伏せ(または壁を使った負荷軽減版)
- 回旋筋腱板強化運動
メンタルケア:寝不足とイライラへの対応
五十肩による日常生活の制限は、心理的な負担も大きいです。
疼痛期・拘縮期での心理的影響
寝不足によるイライラ – 夜間痛や肩が動かない不快感による寝不足から、日中のイライラ、気力低下が生じます。患者さんから「朝起きても疲れが取れない」「気分が落ち込む」という訴えが多いのはこのためです。
日常生活の制限への不安 – 洗濯物が干せない、髪が洗えないなど、今まで当たり前だった動作ができなくなる喪失感。「このまま治らないのではないか」という不安も増幅します。
仕事への支障 – 肩を使う職業では、仕事が思うようにできないストレスが加わります。
メンタル対策
睡眠の質の向上 – 前述した寝姿勢の工夫で、少しでも睡眠の質を高める。痛み止めの活用も、心身の安定に役立ちます。
副交感神経を優位にする工夫 – 入浴、瞑想、深呼吸など、副交感神経を優位にしリラックス状態を作ることで、心身の緊張が軽減され、イライラが減少します。
医療者とのコミュニケーション – 整骨院の施術中に、患者さんの心理的な不安を聞き、「拘縮期は自然な経過であり、適切な治療で必ず改善する」というメッセージを伝えることで、患者さんの不安が軽減されます。
段階的な目標設定 – 「1週間で洗濯物が干せるようになる」など、小さな達成目標を設定し、実現することで、患者さんの心理状態も前向きになります。
患者事例:50代男性の五十肩回復記
患者:T様、56歳、建築業(肉体労働)
発症のきっかけ:ある朝、ベッドから起きる時に、左肩に激痛が走った。初めは「寝違えかな」と思い、放置していたが、数日で痛みが増幅。夜間痛で毎晩目を覚ましてしまう状態に。
疼痛期(初月):医師の診察でステロイド注射を受けると同時に、江別市のふくい整骨院に来院。電気治療と超音波治療を週2回、計4回受けたところ、夜間痛が大幅に軽減。痛み止めの服用も減少。1ヶ月後、痛みは「10段階中8」から「3」程度まで低下。
拘縮期(2ヶ月目~4ヶ月目):痛みが引いたため、仕事に復帰。しかし、肩が上がらないことに気づき、洗濯物が干せない、建築現場で高い位置の作業ができないといった支障が出現。この段階で、整骨院での集中的なリハビリを開始。ハイボルト治療と手技療法(筋膜リリース、ストレッチング)を週2~3回受け、並行して自宅での段階的ストレッチを毎日実施。3ヶ月目には「手が腰の後ろに回せるようになった」と報告。4ヶ月目には、前方挙上がほぼ正常まで回復。
回復期(5ヶ月目~):整骨院での施術を週1回に削減。自宅での予防運動を週3~4回継続。6ヶ月目には、仕事での肩の使用も完全に復帰。現在(発症から8ヶ月後)、月1回の定期メンテナンスで、対側予防も行っている。
本人のコメント:「疼痛期の夜間痛は本当につらかった。でも、拘縮期で整骨院での集中的なケアを受けたおかげで、可動域がここまで戻ったのは驚き。痛みが引いたからと放置しなくて良かった」
仕事を続けながら治療するコツ
五十肩で仕事を休むわけにはいかない患者さんが多いでしょう。仕事を続けながら治療するコツを職業別に解説します。
デスクワークの場合
肩の位置を意識する – デスク作業中、患側の肩が無意識に上がり、緊張しやすい状態になります。意識的に肩の力を抜き、リラックス状態を保つ。
定期的なストレッチ – 1時間ごとに5分程度、肩甲骨を動かすストレッチを行う。肩周辺の筋肉の血流が改善され、硬さが軽減されます。
パソコンの位置調整 – パソコンの画面の高さを、目線と同じ高さに調整。患側の腕を無理なく支える状態を作る。
マウスと キーボードの位置 – マウスは患側の肩に負荷をかけない位置に。キーボードは患側の腕を自然な角度で置ける高さに。
肉体労働の場合
肩を使う作業は段階的に復帰 – 疼痛期や拘縮期初期は、肩を使わない作業に従事。可動域が回復するにつれ、少しずつ肩を使う作業に復帰。
作業の工夫 – 高い位置の作業は、脚立や椅子の高さを調整し、肩をできるだけ上げない工夫。重い物を持つ時は、患側を避け、反対側に負荷をかける。
休憩時間の活用 – 作業の合間に、軽いストレッチで肩をほぐす。疲労が蓄積すると、肩の痛みや硬さが増幅されるため、細目な休憩が重要。
医師・整骨院への報告 – 仕事の内容と困難な動作を、医師や整骨院のスタッフに具体的に報告。それに応じた治療やアドバイスが受けられます。
復帰判定と完治の目安
五十肮はいつまで通院すべきか、いつ「治った」と判定するのかを解説します。
復帰判定の基準
痛みの消失 – 日常生活での痛みがほぼ消失し、軽い違和感程度に。仕事での肩の使用で痛みが出ない状態。
可動域の回復 – 前方挙上、側方挙上、内旋、外旋が、すべて正常範囲(それぞれ90度以上)に回復。
筋力の回復 – 患側と非患側で、肩周辺の筋力の差がほぼなくなった状態。
日常動作の復帰 – 洗濯物干し、髪洗い、着替え、寝返りなど、すべての日常動作が無理なく実施できる状態。
仕事への復帰 – 職業に応じた肩の動きが、支障なく実施できる状態。
完治の定義と予防の継続
医学的には、疼痛期から回復期へ完全に移行し、上述の基準をすべてクリアした状態を「完治」と判定します。しかし、五十肩は再発や対側発症のリスクが高いため、完治後も予防を継続することが重要です。
完治後の対応:月1~2回の定期メンテナンスを、最低でも1~2年は継続。毎日のストレッチと週3~4回の軽い筋トレも習慣化。これにより、再発リスクを大幅に軽減できます。
FAQ:よくある質問と回答
Q1:五十肩は必ず手術が必要ですか?
A:いいえ。軽度から中程度の五十肩の大多数は、保存療法(手術なし)で回復します。整骨院での電気治療や超音波治療、自宅でのストレッチにより、数ヶ月で可動域が回復するケースが大半です。手術が必要なのは、腱板が完全に断裂し、保存療法で改善が見込めない極めて重症な場合に限定されます。
Q2:疼痛期と拘縮期、どちらが長いですか?
A:個人差がありますが、疼痛期は1~3ヶ月、拘縮期は3~9ヶ月が目安です。拘縮期の方が長いことが多く、この期間に適切な治療を受けるかどうかで、最終的な回復に大きな差が出ます。
Q3:痛みが引いた=治ったと判断して良いですか?
A:いいえ。疼痛期の痛みが引いても、拘縮期で肩が動かなくなります。この時点で治療をやめると、可動域が固定化し、その後の回復が大幅に遅れるリスクが高まります。医師や整骨院から「拘縮期の治療も継続すべき」との指導を受けた場合は、必ず従ってください。
Q4:整骨院への通院頻度はどのくらいが目安ですか?
A:疼痛期は週2~3回、拘縮期は週2~3回の集中的なケアが効果的。可動域が回復し始めた段階で週1回に削減し、回復期には月1~2回のメンテナンスに移行するのが一般的です。
Q5:自宅でのストレッチだけでは治りませんか?
A:ストレッチは非常に重要ですが、整骨院での電気治療や超音波治療、手技療法との組み合わせで、より効果的かつ迅速に回復します。ストレッチだけに頼ると、回復期間が大幅に延びるリスクがあります。
Q6:仕事を休むべきですか?
A:疼痛期の激痛がある場合は、休業を検討する価値があります。拘縮期では、肩を使わない作業であれば就労継続は可能。肉体労働の場合は、医師や整骨院と相談し、作業内容を調整することをお勧めします。
Q7:再発の可能性はどのくらいですか?
A:一度五十肩になった肩が再発する確率は約5~10%。一方、反対側の肩が痛める確率は約30~50%と、かなり高いです。予防ケアの継続が重要です。
五十肩は、確かに日常生活に大きな支障をもたらします。特に拘縮期には「肩が上がらない」「寝られない」といった苦しい状態が続き、心が落ち込むことも多いでしょう。
しかし、適切な治療とリハビリを受けることで、必ず改善します。疼痛期の痛みが引いても、拘縮期で治療をやめないこと。この一点が、完全な回復を左右する最大のポイントです。
江別市のふくい整骨院は、疼痛期から回復期まで、あなたの五十肩改善を全力でサポートします。「痛みが引いたから放置していた」という患者さんの相談も、日々いただきます。そうした患者さんでも、集中的な治療を受けることで、可動域の大幅な改善を実現できた例は数多くあります。
一人で悩まず、ぜひ一度、ご相談ください。














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